イタリア旅行の体験談~初日からスリに遭っても神様の恵みと祝福に溢れ

2017年夏休みも終盤に入る8月末に、娘達の小学校卒業のお祝いに初めてのヨーロッパの旅へ出かけました。美術と音楽に対し非常に興味を持っている二人に、ヨーロッパの地で多くの刺激、感動を与えてあげたいという母心と、私自身がシングルマザーとなってからは、なかなか家族旅行に連れて行ってあげる機会がなかったので、ニューヨークの大都会から脱出して、娘たちに自然あふれるヨーロッパの美しい風景を満喫してもらいたいという願いもありました。

行先はイタリアのベニス、ローマ、フィレンツェを巡る12日間の旅。ベニスとローマを5日間観光した後は、フィレンツェのオーガニックの農場にて5日間の田舎体験という旅行の予定でした。

いよいよ旅行が近づいてくると、楽しみであったと同時に、旅行会社などには全く頼らず、自分ですべて企画したため、一人で責任もって、まだ幼い二人を連れて異国の地へ旅行に行くことに大きな不安もありました。そこで、ニューヨーク教会の牧師ご夫妻に一緒にお祈りをして戴ました。お祈りの後は、それまであった胸騒ぎや不安が無くなり心が軽くなった気持ちでした。

日曜の夜に発ち、ベニスには翌日正午に到着しました。まるで夢のような光景が広がる運河の美しい街。初日は半日観光をたっぷり満喫しました。素敵な雰囲気のレストランのテラスでイタリアン料理を楽しみ、日が暮れてきたので、そろそろ帰ろうとしたときに事件は起きました。

写真(2017年12月のフロリダ直撃のハリケーン時、通りが川のように氾濫)

レストランから見えていた「リアルト橋」を渡り、その橋から見えるベニスの街の絶景を写真に撮りたいと思ったのです。夕日が沈みかける一番美しい時間帯だったこともあって、いつも大混雑しているリアルト橋は、さらに人が溢れていました。私も娘達をこの風景と共に写真に収めたいと必死になってシャッターを切っていました。ふと、肩から掛けているバッグに目をやるとカバンのジッパーが見事に開いてていました。「まさか?」と思って中身を確認…。すると…無いのです。数分前にレストランで支払った時のお財布が…。「そんなはずはない!」と思ってバッグの中身をすべて取り出してもお財布は見つかりません。そうです。スリにあってしまったのです。ほんの数秒の出来事でした。あとから聞いた話ですが、日本人の女性、そして、子連れの母親は狙われやすいのだそうです。

実はイタリア旅行に行く話をした際、なぜか多くの日本人の友人達から「ヨーロッパはスリが多いらしいから気を付けてね」と注意をされていました。あまりにも多くの人に警告されたので、出発前日に肩から掛け洋服の中にいれられるポシェットを購入したほどです。

しかしながら、私が油断していたのは「スリが多いのはローマで、このような平和な街ベニスにはスリはいないだろう」と勝手に考えていたことでした。

写真(2017年12月のフロリダ直撃のハリケーン時、通りが川のように氾濫)

このスリ事件が起きた瞬間、頭が真っ白になり、「神様助けてください」を繰り返し繰り返し言い続けながら、平静を何とか取り戻す努力をしました。誰を頼ることもできない…。どうしたらいいのだろう? なぜ12日間の長期旅行の初日にこんなことになってしまうのだろう?

それでも、どんな時でも神様を信じて感謝する…すべてのことに感謝しなさいと教会で学んでいる言葉を自分に言い聞かせました。まるで神様が導いてくださったかのように私は、先ほど夕食をしたレストランに戻りました。そこのレストランのウェイターに、「スリにあった場合はどうしたらいいか?」と聞いてみましたが、とにかくお財布に入っていた5枚のクレジットカードを一刻も早く止めるため五社のクレジットカード会社に電話する事が先決だと判断しました。

両腕にしがみついて泣きじゃくりながら「お母さん、もうイタリアにいたくない。明日アメリカに帰ろう」という娘達の肩を抱えながら「神様にお祈りしよう。神様は絶対に助けてくれるから大丈夫」と伝えるのが精一杯でした。

先ほどレストランに戻ったのは神様のお導きだったと書きましたが、このレストランのスタッフの方々の支えがなければ、この異国での危機を乗り越えられなかったと思うのです。お店のWi-Fiを閉店間際まで長時間利用させてもらったり、携帯電話の充電をさせてもらうことができ、2時間半かけて奇跡的に5枚の全てのクレジットカード会社と連絡が取れカードを止めることが出来ました。その間も、代わる代わるスタッフ皆が我々に優しく声をかけてくれ、飲み物やおやつまで出してくれ「これは、私たちからの気持ちだから」といって気遣ってくださって…。本当に感謝の気持ちで一杯でした。

また、イタリア国内で通話をする機会はないだろうと思い、アメリカで利用している携帯電話会社に海外でも通話ができるよう切り替えてはいませんでした。ですので、なぜイタリア国内で電話が繋がったのか今でも不思議です。後から携帯会社、或いはカード会社から多額の請求書が届くかと心配だったのですが、2時間半かけ続けた電話はすべて無料通話でした。神様のお守りがあったことに感謝します。

すべて終了した頃には、レストランもすっかり閉店しており店内を片付けている状況でしたが、スタッフの方々は最後は明るく握手をして私たちを温かく見送ってくれました。

少し私も心が落ち着いたとはいえ、これから残りの旅をどのように続けたらいいのか見当もつかなかったですし、まずはどうやってレストランから、ホテルまで戻ればよいのかも分からず途方に暮れてしまいました。道に迷っていると…。目の前に三人の女性グループが歩いていたのです。すぐに、声をかけると三人のうち一人だけ片言英語が喋れました。そして、その女性にスリにあってしまい、帰る道を迷っていると伝え、ホテルの住所を渡すと「私たちも丁度そちらの方向に行くから一緒に行ってあげるわ」と道案内してくれたのです。神様はこうして私たちの安全を守ってくださり、私たちは無事にホテルに到着することが出来ました。

この話をイタリア旅行から帰ってから、友達や職場の同僚に話すと「なぜ、私たちに一言連絡をくれなかったの?送金をすることもできたし、助けてあげられたのに。。。」と口々に言われました。

なぜでしょう?私は、誰に助けを求めなくても、神様が必ず共にいて下さり、私達の危機を救ってくださり、良い方向へと導いて下さり、すべてを益としてくださるのだと心から信じていたのです。ですから、とにかくお祈りして感謝し続けようと思っていたのです。

ホテルに帰って娘たちが寝静まってから、まずダニエル浅野牧師ご夫妻にメールを打ち、お祈りをお願いしました。ご夫妻からすぐに返信があり、神様の御言葉が送られ、支えられました。「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべてのことに感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって神があなたがたに望んでおられることです。」(1テサロニケ5:16-18)

それから、一晩中私は冷静になって今後旅は続けられるのか、実際に手元にある現金でやりくりできるのか計画を練り直しました。不幸中の幸いは、パスポートと現金が入った旅行用ポーチが盗まれなかったことでした。

すべての行程の支払いを再確認してみると、現金が必要となるのはフィレンツェ到着までの食費5日分のみです。幸運なことに、イタリアに長期滞在となると日本食が恋しくなるだろうと、カップラーメン、インスタント焼きそば、レトルトカレーなどを大量に持って行っていたのです。食費は削りながら旅行ができることを確認できました。ハレルヤ! 神様が旅を楽しく続けられることを示してくださっていると私は心から信じることが出来ました。

翌朝、娘達に事情を話し、神様が守ってくださっていて旅が続けられることを伝えると、気持ちを切り替えて明るく朗らかに喜びを体中で表現してくれる娘達。

それからの5日間はベニスとローマの観光を思う存分満喫し、大きな価値ある経験をすることができ感謝の気持ちが溢れました。

しかし、ローマを経つ日の朝、もう一つの試練が赦されました。スリにあった日の夜、クレジット会社に電話をした際、再発行を依頼していたクレジットカードがフィレンツェの農家の宿泊先に届く予定になっていたのですが、予定日を過ぎても届いていないことが分かりました。

すぐにローマのホテルから、フィレンツェの農家の宿泊先に連絡をとり、事情を話し、現地に到着した際、宿泊費が払えない状況でも宿泊させてもらえるかと確認のメールをすると、何と驚いたことに日本人の受付の方からの返信がありました。この宿泊先に日本人の担当者がいるなど夢にも思わなかったのです。

写真その日本人担当者のお心遣いで、宿泊代も、レストラン代も、アクティビティー代も支払わずに農家の田舎体験をさせて戴くということになったのです。「万が一、緊急時用のカードがチェックアウトの日まで届かなかったとしても、支払いはアメリカに帰ってからでもいいですよ。日本人の宿泊客のことは100パーセント信頼しているから大丈夫です。それよりも、この農場に来たらお金のことは気にせず、とにかく今まで大変な思いをした分、こちらで思う存分楽しんでいってください」と涙が出るようなお返事があったのです。神様の恵みを身に染みるほど感じました。

今回の事件が起こったからこそ、娘たちにとっては、お金が無い中で、いかに旅を楽しむかを発見したり、お金の大切さを十分に理解出来たりと、様々な意味で良い経験ができたのです。今となっては、スリ事件が初日に起きたことに感謝すら覚えます。

又、娘たちは最近、思春期に差し掛かり情緒不安定だったり、反抗したり、母娘間や娘達同士のぶつかり合いが多い生活が続いていました。ところが、このスリ事件が起きたお陰で、三人一体となって協力して支え合い助け合って旅を続けることが第一ということを実感し、感情をぶつけ合うことを忘れ、旅行中は心穏やかにお互いに思いやりをもって過ごすことが出来たのです。

神様は様々な意味で、愛をもって私たち三人を導いて下さり、私たちの心を癒し満たして下さり、私たちの旅を祝福して下さったことを、イタリア旅行のすべてを振り返りながら、感謝の気持ちで一杯になりました。

小さな事件ではありましたが、私たちの旅行体験から、一人でも多くの方々に神様の御業と大きな恵みと祝福が与えられたことをお伝えできれば幸いです。

K
(すべて写真はKさん撮影)